服装は着る人を語るラベル
あなたの魅力や能力が伝わるように
戦略的に装いましょう。
エグゼクティブにとって服装はツールである
服装は着る人のラベルです。
服装は「非言語コミュニケーション」の中では重要視すべきものです。周囲の人間からすると、説明無しでもその人が着ているもので「その人の経済状況」「仕事の種類」「センスの良し悪し」人柄」「知性」などが容易に想像できるプロファイリングツールのようなものです。プロファイリングが本当に当たっているかどうかはともかく、外から判断する格好の材料となるのです。
逆に、着る人にとっては、周囲に自分に関するメッセージを送る発信機として利用できます。こう見てほしい、と思えば、服装である程度それがかないます。「リッチで、成功している」こんな想像を持たせるような装い方もできます。また「活躍している、信頼できる、能力がある」という見せ方も、戦略と装い方でできるのです。
ですから、あまり何も考えずにただ着ているだけではもったいないし、また「自分をどう見せるか」という戦略無しで目先のおしゃれだけ追うのももったいないのです。ことにあなたが自分を正当に評価してもらいたいビジネスパーソンであったり、リーダーポジションにいるエグゼクティブであるのなら、なおのこと「戦略ある装い」は欠かせないものです。
服装戦略のための3つのポイントとは?
できるエグゼクティブは「見せ方」を心得ています。クライアントや上司・同僚・部下の期待に応えられるようなイメージを服装に持たせることができます。そのように服装を戦略的に考えるならここでご紹介する3つのポイントはぜひおさえておくようにしてください。
3カ条の1つめ:似合う色の知識
世の中には自分を引き立ててくれる色と、残念ながらそうではない色があります。そうではない色の場合、顔色をいたずらに悪く見せたり、ついてほしくない陰影を顔につけてしまったりします。そこまでひどく印象を悪くしないまでも、全体をどこかぼんやりとした印象にしてしまい、オーラや存在感を弱めることはよくあることです。それでは服装戦略も何もありません。
そのような自分の「パーソナルカラー」タイプを知っておきましょう。
「パーソナルカラー」とは肌の色や血色、髪の毛や瞳の色など、自分が生来持つ個性に合う色系統です。これを知っている人と知らない人は今のところ男女で大きな違いがあり、男性はまだ意識していない人が多いようです。
私がセミナーや研修などでお聞きしたところですと、今まで「パーソナルカラーを診断してもらったことがある」「診断はしてもらったことがないが、本などで読んで自分のタイプを知っている」「何となく知っている」の合計で、女性はだいたい9割方が知っているのですが、男性の場合は1割程度です。ちなみに、エグゼクティブクラスはすでに診断を受けている割合は高くなります。
まだ知らなかったという方はぜひ自分のタイプが何かに関心を持ってください。
服装でよく失敗している例は、「好きな色だから」「運が良い色だから」と身につけているタイプです。残念ながら好きな色と似合う色は違う場合が多いのです。今まで「好き」だけで選んできた人は、いちどパーソナルカラーの診断を受けることをお勧めします。似合う色とは、あなたが映える色です。見た目が明るくなり「華」が宿りやすくなる色です。そういう自分でいるほうが、より「好き」と思えるのではないでしょうか。運が良くなる色も身につけたいのはわかるのですが、似合わない色の場合はハンカチなどの小物に生かしたほうがいいでしょう。
また、似合う色を知っておくより重要なのは、「似合わない色」を知っておくことです。
似合わない色は、人の顔色や陰影と不調和を起こし、顔色を悪く見せたりシワやくぼみを目立たせてしまうなど見た目の印象に悪影響大です。加えて、何だかダサく見えてしまうとか、知的に見えないとか、どうにも理不尽な損をしてしまいます。
注意しておきたいのは、似合う色、似合わない色は「赤が良い」「緑が良い」といったはっきり違う色との相性をいうのではなく、微妙な色の加減で決まります。ですから、「赤」でも似合う赤、似合わない赤があります。例えば、深いワインのような赤が似合うが、チューリップのような明るい赤が似合わない、ということがわかるのがパーソナルカラーです。
ビジネスの場合は「赤」「緑」などを身につける人はそういないでしょう。だいたいはネイビーやグレー、白が主になります。しかし、そんな仕事服=ビジネスアタイアにおいても、そのネイビーやグレー、白の微妙な違いによってあなたの印象は映えたり映えなかったり、また印象が薄くなったりします。
そう考えると、パーソナルカラーがわかっていると、色や柄の選択にあまり迷わなくなります。
また、似合う色系統はそれぞれ調和することがほとんどですので、似合う色をそろていくことでコーディネートでの統一感も出てきます。オーダーで服をつくるときなどは服地の選択肢が多すぎて迷うものですが、その迷いも少なくなります。ですからコーディネートもしやすくなり、洗練された装いにしやすいという利点があるのです。
「パーソナルカラー」は詳しい本やサイトなどが多く出てますので、自分で診断もできますが、できればプロの診断を受けておくことがおすすめです。うちでは、トレーニングコースの中で診断する場面がでてきます。
2つめ:TPOの知識
TPOというと「冠婚葬祭とかね」という人がいますが、日常にこそTPOがあります。ドレスコードを理解し、日常の服装のTPOに明るくなると、「今日はこんな感じがぴったり」という判断がしやすくなります。
日常の中でも、毎日の大半を占めるビジネスシーンでの最低限の知識を持っておくことは大切です。最低限の知識とは以下のものです。
<ビジネス正装>
いちばん厳格なシーンでスーツやビジネスアタイアを着る時の決まりごと
<格合わせ>
服と靴や小物(女性はアクセサリーも)を含めた、組み合わせのルール
<色や柄のフォーマル度>
ビジネスにふさわしい色柄やカジュアルしかダメな色柄など、色や柄の格
これらにうといと、しっかり服装をキメたつもりでもその場面や場所の雰囲気にそぐわないものだったりはっきりマナー違反であったりすることが多くなります。いわゆる流行のファッションや「これがおしゃれ」という感覚だけでいて、TPOを間違うと、それだけで社会的な信頼感は低くなります。しかし、知識があれば逆に「さすが、今日もちゃんとしている」と評価が高まります。
また、最近はビジネスでもカジュアルにドレスダウンすることも多くなりました。ドレスダウンするにしても、知識がおぼつかないでデタラメな格好になってはやはり信頼感も何もありません。カジュアルに装うときも、きちんとした装いの知識があれば、間違いなくセンス良く仕上がります。
服装の知識を得て、今日のビジネスシーンがどのようなものかを考え、その中で自分の位置や役割を分析し、どのような装いが自分の見せ方に適切かを考えることができます。
これがつまり、服装戦略です。
3つめ:サイズ感
あなたが服装戦略として、自分のイメージに「エグゼクティブ感」を加えていきたいとお考えなら、何はなくとも「サイズ」に厳しくなることです。
「サイズ」に厳しくなるという意味は、着る服のサイズが自分にぴったり合っているかどうかを厳しく判断してください、ということです。別の言い方でいうと「サイズ感に気をつけて」ということです。
それほど上等でない服でも、サイズ感がぴったり合うことでとても洗練された雰囲気になることもあれば、その逆で良いものでもサイズが着る人に大きすぎたり小さすぎたりすることで今ひとつ印象がぱっとしない、ということもあります。
例えば日本の政治家のスーツ姿を見てください。多くの方が何だか「もっさり」した印象だと思います。その理由は、姿勢など他の理由もありますが、大きな理由は「大き目サイズ」を好んで着ていることです。適切なサイズ感がないと、もっさりとダサい印象になるのです。
「サイズを合わせて」これは多くの服飾関係者やスーツテーラーなどプロフェッショナルが口をそろえて言うことでもあります。特にビジネスシーンでの服装のサイズ感の合言葉は「フィット」。着かず離れず、身体に沿ったシルエットを作るくらいのサイズ感です。ゆとりがあり過ぎてもダメ、きつすぎてもダメです。
学生のとき合わないサイズの制服を身につけていた体験がある人が多いせいか、日本人は適切なサイズ感を間違えていることが多いようです。特に「ゆとりを持たせて大きめ」にする人が多いのですが、そのちょっとのゆとりの差が「もっさり」感を出すことが多いので気をつけて下さい。
「丈感」にも気をつけましょう。つまり上着丈、袖丈、パンツやスカートの丈などのことです。丈感はビジネスではスタンダードとなる長さがあります。しかし、一方で意外と流行の影響を意外と受けています。スーツでも、その年の流行で微妙に短くなったり長くなったりしてますよね。
丈感もそうですが、同じビジネススーツやビジネスカジュアルでもシルエットは少しずつ変わるものです。そこはショップや雑誌などを日頃からチェックして目を養っていきたいですね。ビジネスにふさわしく、また古臭く見えないようにするため毎年のアップデートは必要になるのです。
なお、市販品を買うときなどは、最低でも2つのサイズを試着してシルエットやシワの出来具合などを厳しくチェックする習慣をおすすめします。試着やオーダーの仮縫いのときには厳しく自分の見え方をチェックしてください。自分のイメージ作りに装いはとても大事な要素です。そしてサイズ感はそのイメージを大きく左右するのです。
いかがでしょうか。英語圏ビジネス先進国では、服装に関する感覚は日本よりも鋭いところがあります。これからグローバルな活躍がしたい、と考える方はぜひこれらの3カ条はしっかりとチェックしてください。
英語圏ビジネス先進国では、「エグゼクティブプレゼンス」がビジネススキルとしてリーダーシップの重要な一部と考えられています。ビジネスパーソンはキャリアアップの過程で身につけていくことが一般的ですが、「服装」は自分を表現する要素として大事な一部です。
服装は着る人のラベルです。あなたを周囲の人が外から判断するときの手がかりとなるものをおろそかにしないようにしてください。
丸山 ゆ利絵
プレゼンスコンサルタント®/アテインメンツ合同会社 代表